いつも福山店ブログをご覧いただき、
ありがとうございます。
鈴木、語ります。
今日のテーマは、「アイサイト」です。
今やSUBARUと言えば、の代名詞となりつつある「アイサイト」ですが、
改めてSUBARUの公式情報等をもとに、詳しくご説明したいと思います。
読んでいただければ、アイサイトの歴史と開発思想、そしてこれから進む方向性が分かります。
かなり濃い内容になっておりますので、下記目次の中から興味のある部分をご覧くださいませ。
_______________________
~目次~
タップでそれぞれの項目へジャンプ
🔷アイサイトとは?
🔷アイサイトの特徴と評価
🔷SUBARUが独自に生んだ革新的技術の凄さ
🔷アイサイトの歴史
🔷アイサイトのこれから(将来戦略)
_______________________
では、始めます!
🔷アイサイトとは?
ステレオカメラを根幹としたSUBARU独自の先進安全技術のことです。
SUBARUの開発思想である「総合安全思想(リンク)」の中では「予防安全」にあたります。
SUBARU独自の総合安全思想 ©︎SUBARU
SUBARUのアイサイトは、試験時のみでなく、“リアルワールド”でしっかり使える、というのが「肝」です。その理由をご説明いたします。
🔷アイサイトの特徴と評価
©︎SUBARU
2020年1月20日「SUBARU技術ミーティング」より抜粋
◾️特徴
アイサイトは、主な機能を「ステレオカメラ(2つのカメラ)」による認識と制御によって実現しています。
このカメラは常に前方を監視し、左右の視差を使って人の“目”と同じように距離や3Dの物体を測定・抽出することが可能です。クルマや歩行者、白線などを識別できるほか、広い視野角と視認距離、カラー画像によるブレーキランプの認識など、高い認識性能を誇ります。
その情報と走行状況をもとに、“頭脳”にあたるソフトウェアが必要な制御を判断し、状況に合わせてクルマの各ユニットを“手足”のように適切に制御します。
今日のSUBARUでは、ステレオカメラのポテンシャルをベースにさまざまなセンサーを組み合わせ、あらゆるシーンでより高度な運転支援を実現しています。
ステレオカメラを根幹とすることは変わっていませんが、協業先を変更するなど、プロセッサやカメラも絶えず進化しています(画像は新世代アイサイト)©︎AMD
◾️評価と実力
アイサイトは、日本、米国、欧州をはじめとする世界の第三者機関の安全性能評価において常にトップクラスの評価を獲得するとともに、日本国内の事故件数調査でアイサイト(ver.3)搭載車の追突事故発生率は0.06%*2、また、米国IIHSの調査では、アイサイト搭載で負傷を伴う追突事故が85%低減される効果が示される*3など、ステレオカメラの優れた認識性能を強みにSUBARUの予防安全性能向上を支えてきました。
©︎SUBARU
🔷SUBARUが独自に生んだ革新的技術の凄さ
アイサイトは、SUBARUの独創と内製へのこだわりが生んだ、先進安全技術です。
搭載されるソフトウェアの仕様や、ステレオカメラの仕様策定、画像処理ロジックに至るまで全て内製。
それを実現できるのは、自動車を開発・製造するメーカーならではのスピーディな開発ができる環境があるからこそ。
開発→試作車実装→検証・評価→修正のPDCAを素早く回せるからこそ、リアルワールドでの精度が極めて高いシステムが完成しています。
数値では語れない凄さがあるのです。
開発を始めたのは、1989年。
なんと、今から35年も前に遡ります。
もともとは安全技術としてではなく、エンジンの燃焼状態を計測する技術として開発しました。
その技術を応用し、ADAやアイサイトといった安全に資する機能として世に送り出しました。
前方環境を一気に捉えてすべて立体視するセンサー(=ステレオカメラ)が衝突回避にもっとも有効であると考え、30年以上にもわたり制御プログラムの豊富なデータを蓄積し、その膨大なデータ(社内では距離画像データと呼称)と向き合ってきました。だからこそ、SUBARUには豊富な知見があります。
今でこそ当たり前になりつつある、先進安全技術ですが、特に注目していただきたいのは、「誰もが望んでいる機能を、誰もが買えるもの」としてSUBARUが世に送り出したこと。
近年、高価格帯ではLiDARを採用するモデルが増えていますが、現時点では原価が高く普及価格帯のモデルには採用しづらい側面があります。一番多い前方方向の事故において、精度の高い距離画像データを量産レベルで効率的に作れるのがSUBARUのステレオカメラシステムだと考えています。
©︎SUBARU
コストが限られる量販車では、お客様がいちばん必要としている機能(≒衝突回避)に的を絞り込み、一点突破で内製のシステムを編み出してはじめて、差別化を図れます。
私たちは、人間の目と同じ仕組みのステレオカメラを中核に、乗り手のお客さま目線に立って、「ぶつからない」安全・安心なクルマのあり方を提案してきました。
©︎SUBARU
今日では広く評価され、多くの支持を集めて、「ぶつからないクルマ?」というキャッチコピーのもと、一大ブームを巻き起こし、現在に至ります。
🔷アイサイトの歴史
■1999年 アイサイトの前進となる「ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)」誕生
キーワード:
⭐︎世界初の車載ステレオカメラ
©︎SUBARU
SUBARUでは、ステレオカメラの画像認識に基づいてドライバーに危険を知らせたり、車両の制御を行うドライバー支援システム「ADA」の研究開発を1989年からスタートし、世界に先駆けて市販化に成功しました。
当初のシステムでは「車間距離制御クルーズコントロール」「車間距離警報」「車線逸脱警報」「VDC(横滑り防止装置)プレビュー制御」を提供しました。
さらに、2003年には、ミリ波レーダーを搭載し、「追従モニター」「ふらつき警報」「グリップモニター」「前車発進モニター」を追加した第2世代のADAを発売しました。
高価格ゆえに普及はしませんでしたが、
これらは2008年に誕生する運転支援システム「アイサイト」へと受け継がれていきます。
■2008年5月 運転支援システム「アイサイト」誕生
キーワード:
⭐︎世界ではじめてステレオカメラのみで実現した「プリクラッシュブレーキ」と「全車速追従機能付クルーズコントロール」
⭐︎当時世界トップレベルの衝突回避能力
©︎SUBARU
新型ステレオカメラと新開発3D画像処理エンジンを用いることによって、歩行者、自転車をも対象とした優れたプリクラッシュセーフティを実現する運転支援システム「アイサイト」が誕生しました。
世界で初めてステレオカメラのみでの「プリクラッシュブレーキ」、「AT誤発進抑制制御」などの予防安全機能や、「全車速追従機能付クルーズコントロール」による運転負荷軽減機能を備えました。
■2010年5月 「アイサイト(ver.2)」誕生
キーワード:
⭐︎完全停止のプリクラッシュブレーキ
⭐︎10万円という低価格の実現
⭐︎海外展開を開始
第2世代のアイサイトは、自動ブレーキによって車両を減速・完全停止させる「プリクラッシュブレーキ」で、前方衝突の回避または衝突被害の軽減を図るとともに、先行車が停止した場合も追従して停止制御する「全車速追従機能付クルーズコントロール」の追従性能を強化しました。従来型に比べて運転支援範囲を大幅に拡大させ、渋滞時などの運転負荷を軽減する機能を実現しました。
当時、日本初のシステムだった為、安全性の検証だけでなく、官庁への安全性の考え方の説明も時間をかけて進めました。搭載車種も大幅に増え、知名度が一気に高まりました。
■2013年10月 「アイサイト(ver.3)」発表
キーワード:
⭐︎先行車ブレーキランプ認識制御に対応
⭐︎ステアリング制御に対応(65km/h以上で作動)
©︎SUBARU
第3世代のアイサイトは、より広角かつ遠方まで捕捉し、CMOSセンサー採用によるカラー認識も実現して先進安全機能を大幅に進化しました。カラー認識対応により、先行車のブレーキランプを認識できるようになり、より自然で素早いブレーキ制御が可能になりました。
また、ステアリング制御支援機能(作動は65km/h以上)である「アクティブレーンキープ」をはじめ、「AT誤後進抑制」、「ブレーキランプ認識制御」などの新機能、「プリクラッシュブレーキ」や「全車速追従機能付クルーズコントロール」の性能向上により、予防安全技術を大幅に高めました。
©︎SUBARU
■2017年6月 「アイサイト ツーリングアシスト」発表
キーワード:
⭐︎ステアリング制御が0km/h以上に作動範囲を拡大
⭐︎状況により先行車の走行軌跡をついていく制御に対応
©︎SUBARU
「ツーリングアシスト」では操舵支援機能の作動範囲を広げ、「全車速追従機能付クルーズコントロール」と組み合わせることで、高速道路でのアクセル、ブレーキ、ステアリング操作の自動制御を実現しました。
基本的には区画線を認識して中央維持するように制御しますが、渋滞で区画線が見えにくい時や区画線がかすれてしまっていて制御に使えない場合に、先行車の走行軌跡をついていくようにステアリング制御をすることで、幅広いシーンでアシスト走行を可能にしました。
これにより、リアルワールドの幅広いシーンで運転負荷の大幅軽減に貢献するシステムへとアイサイトを進化させました。
■2020年 「新世代アイサイト・アイサイトX」発表
キーワード:
⭐︎360度センシングに対応
⭐︎再び世界トップレベルのADAS性能へ
⭐︎違和感なく自然で、誰が乗っても上手に安心してクルマをコントロールできるシステムを実現
©︎SUBARU
「新世代アイサイト」の開発コンセプトは、「量販価格で高級車以上の機能を実現する」こと。
アイサイト独自のステレオカメラに加え、前後左右4つのレーダーでカメラの死角をカバーすることで、360度センシングを実現しました。
見通しの悪い交差点での車、歩行者、自転車との出会い頭や右左折時など、これまで避けられなかったシーンまで衝突回避をアシストします。
SUBARU
また、「新世代アイサイト」に高度運転支援システムを搭載した最先端の安全テクノロジーが「アイサイトX」です。
GPSや準天頂衛星「みちびき」などからの情報と車載3D高精度地図データを組み合わせ、自車位置を正確に把握。ステレオカメラやレーダーでは検知しきれない行く先々の複雑な道路情報まで認識し、新次元の運転支援を実現します。
アイサイトX使用可能条件:
一定条件*6を満たした自動車専用道路
主な機能(作動には一定の条件があります):
⭐︎渋滞時ハンズオフアシスト
渋滞時(0km/h~約50km/h)、ステアリングから手を放すことが可能となります。
⭐︎渋滞時発進アシスト
渋滞時、スイッチ操作をすることなく発進します。
⭐︎カーブ前速度制御
進入するカーブの曲率に合わせて、適切な速度に制御します。
⭐︎アクティブレーンチェンジアシスト
方向指示器を操作すると、システムが作動可能と判断すると、ステアリングを制御して車線変更のアシストを行います。人の運転感覚に近い滑らかな制御を行います。
⭐︎料金所前速度制御
料金所の手前で、ETCゲートを安全に通過できる速度まで減速し、通過後はセット車速まで加速します。
⭐︎ドライバー異常時対応システム
ドライバーに異常が発生したと判断した際、徐々に減速・同一車線上に停止し、ハザードランプやホーンで周知します。
©︎SUBARU
エンジニアによると、開発に際しては制御はもちろんのこと、ドライバーにどのようにクルマの状態を伝えるのかも苦慮した部分だったとのこと。走行試験を重ね「リアルワールドで安心して使える機能」を追求して、改善点を見つけては改修し、その確認をしてさらに課題を見つけていったそうです。
開発担当エンジニアは、「量販価格で高級車以上の機能」は十分に達成されていて、量産車の領域では「世界一使えるもの」になったと思う」と語っています。開発ストーリーはコチラ
アイサイトX作動時のフル液晶メーター内表示の一例(画像はLEGACY OUTBACK D型 倉敷JCT付近にて助手席より撮影):
メーター内表示の分かりやすさも魅力のひとつです。自車の挙動に合わせてブレーキランプやウインカーも光るこだわり。斜め後ろに車がいる場合は扇形のイラストでドライバーへお知らせします。この場合はアクティブレーンチェンジアシストは使用不可となります。
©︎SUBARU
そして、2022年6月にはアイサイト搭載車の世界累計販売台数が500万台を達成しました。
■2022年 新世代アイサイトがさらに進化(超広角単眼カメラ採用)
キーワード:
⭐︎視野角が大幅拡大し事故回避性能が強化
新世代アイサイトに、超広角の単眼カメラが加わり、視野角が従来(超広角単眼カメラを採用していない新世代アイサイト比)の約2倍の128度になりました。
広い認識範囲によって運転時の死角を大幅に減少させ、危険をいち早く発見し、今まで回避しきれなかったシーンでも事故の回避をアシストできるようになりました。
©︎SUBARU
公開されているイメージを元に、スタッフにて加筆したイメージです。ご参考まで。
超広角単眼カメラは、インプレッサ・クロストレック(いずれもAタイプ〜)、レヴォーグ・レヴォーグレイバック・レガシィアウトバック・WRX S4(いずれもDタイプ〜)に標準装備となります。なお、後側方レーダーは、超広角単眼カメラ採用モデルでも一部対応しないグレードがあります。
🔷アイサイトのこれから
■2024年4月 米AMDとの協業を発表。
2020年代後半にAIを搭載した次世代アイサイトへ
キーワード:
⭐︎次世代アイサイトにAIを搭載すること発表
右:SUBARU 執行役員 CDCO(Chief Digital Car Officer)柴田英司氏
左:AMD SVP and GM, Adaptive and Embedded Computing Group Salil Raje氏
©︎SUBARU
2020年にAI開発拠点として、ビットバレーと呼ばれ大手IT企業が集積する渋谷に「SUBARU Lab」を開設。開設以降次世代アイサイトに搭載するSoCの協業企業選定や要件定義をはじめとした、AI開発を進めてまいりました。
©︎SUBARU Lab
そして2024年にSUBARUは、米AMD社と2030年死亡交通事故ゼロ*5実現に向け、ステレオカメラの認識処理とAI推論処理を融合し最適な判断結果を出力可能なSoCの最適化に関する協業を開始することを発表。
SUBARUは、米AMD社のVersal™ AI Edge Series Gen 2を採用し、同社とともに最先端のAI推論性能や超低遅延な演算処理を低コストで実現するため、SoC最適化に向けた回路設計を開始します。
長年培ってきたステレオカメラの認識処理にさらなる性能向上を合わせ、2020年代後半の次世代EyeSightに搭載することを目指しています。
©︎SUBARU
◾️AIの可能性
アイサイトの特長であるステレオカメラの認識能力に、AIの判断能力を加えることで、さらなる進化を図りたいとSUBARUは考えています。ステレオカメラは視差を利用して画素(ピクセル)ごとに距離情報を算出でき、AIはカメラ画像から車両や歩行者、道路などを識別し、やはり画素ごとに物体属性を持たせられます。
AIの判断能力によって、下記のような状況への対応が可能となることが予想され、安全性のさらなる向上が期待できます。現時点ではあくまで可能性に留まります
・画像認識が困難になりやすい雨天時や、雪道等の車線認識が困難な道での制御
・自動車専用道路に限定される現在の運転支援機能を一般道への拡充
・路上に人間が横たわっているような状況(高さ1m未満の物体)等の画像処理だけでは認識できない物体認識
現在、渋谷を始め、東京事業所(三鷹市)、群馬製作所(太田市)のエンジニアが全力で開発を進めています。
SUBARUはこれからも「ステレオカメラ」を中心とし、独創と内製でADASの最先端を突き進みます。
SUBARUに、どうぞご期待ください!
*1:2021年販売実績ベース。他社からのOEM供給車を除く。
*2:2014~2018年に発売したアイサイトver.3搭載車数(456,944台)と、公益財団法人・交通事故総合分析センター(ITARDA)のデータ(追突事故数:259件)より、SUBARUが独自算出。
*3:米国保険業界の非営利団体Insurance Institute for Highway Safety(道路安全保険協会)による、2013~2015年型SUBARU車を対象とした2014年末までのデータに基づく調査(2017年1月時点データ)。
*4 ステレオカメラのみ搭載する新世代アイサイトを指します。
*5:SUBARU車乗車中の死亡事故およびSUBARU車との衝突による歩行者・自転車等の死亡事故ゼロを目指す。
*6:アイサイトXは、2車線以上の自動車専用道路を走行している、ステレオカメラが車線などの道路環境を認識できている、3D高精度地図ユニットが車線などの道路環境を検知できている、ルーフアンテナが遮蔽されていないなど、システムの作動条件を満たした場合にのみ作動します。3D高精度地図データが最新化されていない道路(新規開通道路、改修工事道路)では、機能が正しく動作しないことがあります。この他、アイサイトXのご使用について重要な注意事項が記載されておりますので、ご使用前には必ず取扱説明書をお読みください。
参考文献(一部のみ記載、一部グループ外企業のサイトへリンクします)
アイサイトの歴史を知りたい。お問い合わせ/よくあるご質問(株式会社SUBARU)
アイサイト篇:開発ストーリー SUBARUのクルマづくり(株式会社SUBARU)
SUBARUとAMD、ステレオカメラとAI推論処理を融合するSoC設計に関する協業を開始(株式会社SUBARU 2024年4月19日)
SUBARU 運転支援システム「アイサイト」搭載車の世界累計販売台数500万台を達成(株式会社SUBARU 2022年8月31日)
SUBARUは次世代EyeSightで死亡事故ゼロ実現へ、ステレオカメラ×AIは相性抜群
(MONOist 2024年04月22日)
__________________________________
SUBARUを深く知りたい方へ、併せてどうぞ。
◾️鈴木CAのマニアックブログシリーズ
SUBARUのCSR活動、実は米国から!?
SUBARUの電動化戦略を語ります!
SUBARUは今後どうなってゆく? 〜紐解くスバルの電動化戦略〜
熟成のD型、2車種詳しくご紹介します!
レガシィアウトバック年次改良モデル(D型)詳しくご紹介します!
レヴォーグ年次改良モデル(D型)詳しくご紹介します!
__________________________________
箸休めにどうぞ
◾️鈴木CAの西日本紀行シリーズ
– 鈴木CAの西日本紀行 第1回 – LEGACY OUTBACKと桜の名所を廻る。
__________________________________